02 出産後すぐから胸が張り始めるまでのセルフケア

産後や帝王切開後すぐから自分でできるセルフケア

実は数分のセルフケアがとても大切なんです


産後胸が張るまで

出産後の母乳については、マリア像のようなイメージを抱く方が多いのではないかと思います。

すぐに母乳が出て、赤ちゃんはゴクゴクよく飲んで寝る。

でも、産後授乳をスタートしてみると、イメージと全然違うと思う方も多いのではないでしょうか?

 

 

殆どの方は、産後2~7日くらいまでは胸が張ってきません。

個人差はありますが、胸が張ってくるまでの母乳量は、1日30㏄位で、1回の母乳量は1~3ml位でしょうか。

 

生まれたばかりの赤ちゃんは、2時間ほどは起きて泣いたりおっぱいを吸ったりします。

実は、この2時間は、プロラクチン値もピークで乳頭も柔らかいため、陥没乳頭などの授乳しにくい乳首でも、吸えることがよくあります。

その後6時間ほど眠りにつくことが多いかと思います。

起きると、ずっと泣いて母乳を欲しがったりアピールする赤ちゃんもいますし、まだしばらくは眠りがちな赤ちゃんもいます。

 

胸はまだ張っていないし、母乳もにじむ位しか出ないし、胸が張ってくるまで赤ちゃんを預けて寝てしまおうと思うかもしれませんね。

 

母乳を作るプロラクチンというホルモンは、出産直後が最大値となります。

このホルモンは、授乳をしないでいると、どんどん下がって2週間ほどで妊娠前に戻ってしまいます。

 

授乳又は搾乳を行うことでプロラクチンがアップして、またしばらくすると低下して、授乳するとキープされるということを繰り返しています。

 

 この時期は、少量の母乳を飲んでもらったり、少量の搾乳をすることで、プロラクチン値をキープするという大切な時期です。

 

プロラクチン

出産後、胎盤が剥がれると、母乳を作るための最終段階がスタートします。

 

産後すぐのプロラクチン濃度は最高値となっています。

プロラクチンは、母乳分泌作用などを持つホルモンです。

産後2時間ほどは、たとえ吸いにくい形や硬さの乳首であっても、プロラクチンの影響で柔らかく吸いやすいことが多いので、母子が可能な状態であれば授乳にトライすると良いでしょう。

産後2時間は、赤ちゃんは子宮外の環境に対応するための不安定な時期でもありますので、医療者に見守ってもらいながら安全に行うと良いでしょう。

もし、様々な状況でこの時期に授乳が出来なくても心配はいりません。

胸が張り始めるまでの期間にセルフケアで簡単に行えることがいくつもあります。

 

ラッチオンについて

授乳のポイントは、ラッチオンです。

ラッチオンとは、おっぱいを赤ちゃんがしっかりととらえる飲ませ方です。

授乳の時に、赤ちゃんは乳首を吸っているのではなく、乳首と乳輪をくわえています。

 

ですから、実は乳頭だけではなく、乳輪の柔らかさや伸びが授乳の大切なポイントです。

赤ちゃんが乳首にまっすぐに向かって吸うと、舌の下側のおっぱいの長さが足りずに、乳頭の上側だけ引っ張られて歪み飲みになってしまいます。

赤ちゃんの顎からおっぱいに向かい、下唇が乳首から親指の第一関節位離れたところに最初に触れます。

赤ちゃんの口周囲を刺激してお口を大きく開けて舌が少し出た状態の時に、乳首の少し上のあたりに上唇が届きます。

 

下唇側が深く、上唇側が浅くくわえることで、乳頭の中心が口の中では中心に来るということになります。

 注意点として、舌が上がったままでは、口に入ったように見えても全く赤ちゃんは飲むことが出来ません。また、赤ちゃんの頭を押さえると、逆に頭を反りますので、首の付け根から肩を支えましょう。

唇を刺激してもお口をあけなかったり、舌が上がったままになる赤ちゃんには、生まれつき赤ちゃんに備わっている探求(探索)反射を利用します。

 

乳頭乳輪の整え方

赤ちゃんが飲みやすい乳首かどうかは、乳輪から乳頭を親指と人差し指でつまんでみると分かります。

 

親指の腹が赤ちゃんの舌の上、人差し指の腹は口の中の口蓋です。

乳輪からつまんでつまみやすければ、赤ちゃんが吸いやすいということで、つまむ方向を変えてみると、どの方向が吸いやすくて、どの方向は吸いにくいかが分かります。

 

赤ちゃんが母乳を飲むためには、少なくても舌の上に乳首が届いている必要があります。

 

乳首が陥没していたり、小さかったり大きかったとしても、乳輪が柔らかければ舌の上まで伸びるので、赤ちゃんは吸うことが出来ます。

 

逆に、乳輪が硬くて伸びなければ、乳頭の形や柔らかさが良くても、乳頭だけ吸って表面の皮を引っ張って血豆が出来たり、吸い傷が出来たりします。

 

傷ができると痛みで吸わせにくくなりますし、傷がかさぶたになって乳口を塞ぐこともありますので、痛みを感じたら、赤ちゃんの口の横から指を少し入れて外して吸わせなおしましょう。

 

探求反射(探索反射)について

本来は、練習しなくても最初から赤ちゃんに備わっている原始反射の一つです。

赤ちゃんが生きていくために、又は発育途中あるために起こるのが反射で、3か月から半年くらいで見られなくなっていきます。モロー反射などが有名ですね。

探求反射がみられなくなることは割と多く、入院中などの早い時期に、探求反射を使わずに哺乳瓶の乳首を口にすぐに入れて吸わせていると起こりやすいように思います。

探求反射が消えることで、哺乳瓶はすぐに吸えるけれど、母乳は吸えないことがよくあります。

これを乳頭混乱と呼ぶ方もいます。

乳頭混乱というと、まるで赤ちゃんが混乱しているように感じますが、実際は、大人が探求反射を使わない飲み方赤ちゃんにを教えているだけです。

探求反射は、赤ちゃんの唇をちょんちょんと刺激したり、乳首や指でなでてあげると、口を大きく開けて舌を下げたり、乳首を探して首を振ったりする反射です。

母乳をあげようとするとイヤイヤして嫌がるんですと勘違いされるママもいらっしゃるのですが、実際は赤ちゃんは母乳を飲もうと乳頭を探している途中ですので、大丈夫ですよ。決して母乳を飲むのを嫌がっているわけではありません。

 

探索反射を利用してみる

哺乳瓶でミルクや搾乳をあげる時には、探求反射を使って赤ちゃんが口を大きく開けて舌を少し出すまでしばらく待ってみます。

母乳を飲んでもらおうとしても、舌が上がっていたり、浅飲みになったり、上手くお口が開かないときには、きれいに洗った指でお口をチョンチョンしたり、唇をなでたりしてみます。

それでもお口をあけないときには、指の腹を上にして人差し指をお口の中の舌の上に少し入れてみます。

赤ちゃんが指を上手く吸えないようなら、授乳のたびに練習をしてみましょう。

大抵は、2~3回の授乳やミルクの時の練習で、思い出したように口をあけて探し始めます。

産科の夜勤でママが疲れて夜赤ちゃんをお預かりするときに、母乳を吸ってもらえないというご相談を受けました。探求反射がみられなかったので、探求反射のご説明をしてからお預かりしたことがあります。

夜中ミルクの時に根気よく練習を行っていると、少しずつ探求反射がみられるようになって、朝の授乳ではそれまで飲めなかったおっぱいも吸いつける様になりました。

赤ちゃんに最初から備わっている反射は、赤ちゃんがその時期に生きていくために必要で備わっているのです。